No.204 春霞賞候補作紹介 2019年4月号
■春霞賞候補作の紹介、続いては2019年4月号分。この月は大激戦で、3作が全くの同点で並びました。
■詰パラ2019年4月号 大学10 若島正氏作
◇同じ箇所での「金先金歩+銀先銀歩」玉方応用
97香、96歩合、85金、同玉、82龍、84金合、同銀成、同桂、
76金打、同銀、35龍、65銀打合、同龍、同銀、86銀、94玉、
96香、同桂、95銀、同玉、62角成、同馬、86金、94玉、
95歩、同馬、同金、同玉、73角、94玉、84角成 まで31手詰
久保紀貴-金銀両方の不利合を、玉方銀の位置の違いだけによって切り分け、実現した作品。作ったことがある人であれば金と銀の切り分け方自体はよく知るところでしょうが、両方取り入れて作品にしてしまうアイデアは非凡と思います。97香限定打の序も流石。
馬屋原剛-ikironさんのコメントと被るが、同じ舞台で、銀の位置の違いだけで金、銀、の不利合を切り分けてる点に脱帽。発想も構成力もずば抜けている。
太刀岡甫-不利合もそこまで珍しくなくなった昨今だが、同じ打歩を巡って別の不利合が出るというのが驚きである。2つの合駒の間隔が狭いのが良い。変化伏線の限定打も盛り込み、収束も捌けるため完成度が非常に高い。
■詰パラ2019年4月号 大学院7 太刀岡甫氏作 「ストライクショット」
◇「遠打+馬鋸+角筋遮断の飛車移動」のブルータス手筋
91と、同玉、81歩成、92玉、91と、82玉、81成香、72玉、
71成銀、62玉、61成香、52玉、42と上、同金、同と、同玉、
41金、52玉、51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、
83歩、同成香、93歩成、同成香、81成香、72玉、71成銀、62玉、
61成香、52玉、51金、42玉、41成香、32玉、33歩、43玉、
91と、同玉、81歩成、92玉、91と、82玉、81成香、72玉、
71成銀、62玉、61成香、52玉、42と上、同金、同と、同玉、
41金、52玉、51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、
83歩、同成香、93歩成、同成香、81成香、72玉、71成銀、62玉、
61成香、52玉、51金、42玉、41成香、32玉、33歩、43玉、
65馬、33玉、55馬、24玉、15と、同玉、27桂、14玉、
18飛、23玉、35桂、32玉、65馬、33玉、66馬、32玉、
76馬、33玉、77馬、32玉、87馬、33玉、88馬、32玉、
98馬、33玉、99馬、32玉、31成香、42玉、41金、52玉、
51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、88飛、87歩合、
81成香、72玉、71成銀、62玉、61成香、52玉、51金、42玉、
41成香、32玉、33歩、同玉、87飛、77金合、同馬、24玉、
25歩、14玉、24金、15玉、59馬、同成銀、17飛、16歩合、
同飛、同玉、17歩、15玉、16銀、26玉、27銀右、15玉、
16歩 まで113手詰
太刀岡甫-ブルータス手筋を馬鋸で行うだけでなく、後に馬筋を遮断する意味づけの限定打が新しい。
久保紀貴-18飛限定打~馬鋸で99馬~88飛の複合技で馬筋を閉じ、打歩詰を打開。ブルータスの前に飛を限定打するのが新しいところです。 ただ席上では限定打の演出について「27桂のせいで自然な手に見える」という意見がありました。
馬屋原剛-駒場作があるのでそれ程評価していなかったが、確かに限定打から始めたのはプラス。
<参考図> 風ぐるま1955年9月号 駒場和男氏作 「望郷」
◇「遠打+馬鋸で飛車筋遮断」のブルータス手筋
33金寄、同歩、29飛、31玉、32歩、同玉、44桂、31玉、
42と、同玉、51飛成、同玉、62歩成、同玉、52角成、71玉、
81香成、同玉、63馬、91玉、64馬、81玉、54馬、91玉、
55馬、81玉、45馬、91玉、46馬、81玉、36馬、91玉、
37馬、81玉、27馬、91玉、28馬、81玉、73桂、71玉、
72歩、62玉、63歩、同玉、64銀、62玉、63歩、51玉、
61桂成、同玉、71歩成、同玉、77香、同と、62歩成、同玉、
73銀生、51玉、52歩、42玉、43歩、31玉、32歩、22玉、
64馬、24桂、同飛、同金、31馬、12玉、13馬、同玉、
14歩、同金、同香、同玉、24金打、15玉、27桂まで79手詰
■詰パラ2019年4月号 大学院8 馬屋原剛氏作
◇逆回転による微分
『41飛成、23玉、21龍、22飛合、同龍、同玉』=『A』手順とする
『21龍、22飛合、同龍、同玉、21飛、32玉』=『B』手順とする
『A』、55馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
56馬、34と上、『B』 、65馬、43と、
『A』 、66馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
67馬、34と上、『B』 、76馬、43と、
『A』 、77馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
78馬、34と上、『B』 、87馬、43と、
『A』 、88馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
78馬、34と上、『B』 、87馬、43と、
『A』 、77馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
67馬、34と上、『B』 、76馬、43と、
『A』 、66馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
56馬、34と上、『B』 、65馬、43と、
『A』 、55馬、44と寄、12飛、31玉、41香成、同玉、
33桂生、同と、51桂成、同玉、42銀、62玉、73と、61玉、
62歩、同金、同と、同玉、51銀生、同玉、42金、62玉、
52金、63玉、62金、74玉、66桂、84玉、94馬、同玉、
85金打、93玉、94歩、92玉、91馬、同玉、82銀、同玉、
72金、92玉、82金 まで179手詰
作者(結果稿解説より)-1手馬鋸や1/2手剥がしなど、いわゆる“微分系”の趣向は「同様」なサイクルを複数回経て鍵が一つ進む。「同様」と表現したのは全く同じではなく、サイクル毎に持駒や置き駒の位置が微妙に異なるからだ。では、全く同じサイクルで微分系の趣向を表現できるだろうか。
一見論理的に無理に思えるが、論より証拠で本作を見て欲しい。確かに全く同様のサイクルを2回繰り返すことで、馬が左下(右上)に一歩動いている。
種明かしをすると、馬と玉の回転方向が逆であるのが肝なのだ。12~89、11~99、21~98のラインをそれぞれa、b、cと呼ぼう。すると、玉はa→b→c→aの順に移動しているのに対し、馬はa→c→b→aの順でしか動けない。従って、馬はaで王手した後にすぐにbで王手したいのだが、間にcの王手を挟まなくてはならない。そのため、1サイクル目ではbの王手ができず、次のサイクルまで待たなくてはならないのだ。趣向の外見に目新しさはないが、コロンブスの卵的な位置づけの作品だと思う。
馬屋原剛-詰工房の席上では参考図2つを交えて説明したがどれだけ伝わったかは微妙。伝統ルールでできるかどうかはさておき、馬ノコ以外で表現できれば、もっと違う印象を与えることができるかも。
太刀岡甫-三段馬鋸。玉方はと金を回すことにより1サイクル分の手数を稼いでいるが、斜め後ろに動けない特性により中央ラインが開くと馬が進むことができる。馬鋸についての深い研究が垣間見られる作。
久保紀貴-玉の軌跡と馬の軌跡(より厳密には、と金スリットの位置の軌跡)の回転方向の違いによって1手馬鋸を実現した作品。説明されないとわかりにくいのが難点ですが、面白いアイデアと思いました。 ただ、合駒制限が必須かは疑問です。
<参考図> 書きかけのブログ 馬屋原剛氏作
◇順回転の3段2手馬鋸
21飛、32玉、23飛成、41玉、63角成、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、64馬、53と寄、
21飛、32玉、65馬、43と上、23飛成、41玉、74馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、75馬、53と寄、
21飛、32玉、76馬、43と上、23飛成、41玉、85馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、86馬、53と寄、
21飛、32玉、87馬、43と上、23飛成、41玉、96馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、97馬、53と寄、
21飛、32玉、87馬、43と上、23飛成、41玉、96馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、86馬、53と寄、
21飛、32玉、76馬、43と上、23飛成、41玉、85馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、75馬、53と寄、
21飛、32玉、65馬、43と上、23飛成、41玉、74馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、64馬、53と寄、
21飛、32玉、44桂、43玉、41飛成、42飛合、同銀成、同と、
同龍、同玉、52飛、41玉、32飛成、51玉、52歩、62玉、
63歩、同と、51歩成、同玉、52桂成 まで117手詰
※4月号大学院の馬屋原氏作とほとんど同じ機構に見えるが、回転方向が同じなので、微分にならない例(3段2手馬鋸)。
<参考図> 詰パラ2017年1月号 添川公司氏作 「木曽路」
『34と、25玉、35と、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、23玉』=『A』手順とする
『33と、24玉、34と、25玉、35と、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、33玉』=『B』手順とする
16歩、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、
25と、同玉、35と、15玉、16歩、26玉、36と、17玉、28馬、
16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、33玉、44と、24玉、
『A』 、56馬、32玉、44と、33歩、65馬、23玉、
『B』 、66馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、67馬、32玉、44と、33歩、76馬、23玉、
『B』 、77馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、78馬、32玉、44と、33歩、87馬、23玉、
『B』 、88馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、89馬、32玉、44と、33歩、98馬、23玉、
『B』 、88馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、78馬、32玉、44と、33歩、87馬、23玉、
『B』 、77馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、67馬、32玉、44と、33歩、76馬、23玉、
『B』 、66馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、56馬、32玉、44と、33歩、65馬、23玉、
『B』 、55馬、23玉、45馬、32玉、44と、33歩、43と、同玉、
52銀生、53玉、65桂、42玉、43歩、32玉、41銀生、31玉、
42歩成、同玉、53桂成、同玉、52成銀、43玉、44歩、同飛、
同馬、同玉、45歩、55玉、56飛、65玉、75金、同玉、
85金、64玉、53飛成、65玉、47馬、同香成、56龍、64玉、
76桂、63玉、53龍、72玉、73龍、同玉、84金、63玉、
64金、72玉、83銀成、81玉、82歩、同と、同成銀、同玉、
73金右、81玉、82歩、92玉、83金上、91玉、81歩成、同玉、
82金右 まで367手詰
※1回転目と2回転目で、追い方が変わる3段1手馬ノコの例です。
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