No.207 春霞賞候補作紹介 2019年6月号
■続いて6月号の候補作。5月に続き2作が候補に残りました。
■同人室3 金子清志氏作
◇馬ソッポブルータス
25飛、36玉、26飛、同玉、48馬、35玉、26馬、同玉、
27馬、35玉、39香、24玉、33銀生、23玉、38馬、29と、
24歩、34玉、56馬 まで19手詰
久保紀貴-39馬を消去せず38香~36馬としても打歩詰を解消できるところ、馬を捨ててまで39香~38馬と遠ざかるのが絶妙。近すぎると両王手したときに馬を取られるということなのだが、このように玉と馬の位置関係にフォーカスした作品はかなり希少である。 さらに本作ではそのための遠打、そのための馬消去という表現により、構想が重層化されている。
太刀岡甫-打歩を打開しつつ最終手を見据えた最遠打だが、全く無理なく39馬の邪魔駒消去が入っているのが凄い。駒の位置関係が絶妙である。
馬屋原剛-打歩詰を打開するだけなら、馬より香が後ろにいればよいだけだが、収束を成立させるには、39香、38馬型が絶対。36馬型だと近過ぎて詰まないのが面白いと思った。 39馬の原形消去や39香の限定打を無理なく実現している。絶品。
■同人室5 鈴川優希氏作
◇飛車2枚捨てによる玉方銀成強要
65銀上、47玉、77飛、同銀成、56銀、同玉、76飛、同成銀、
65銀、47玉、56銀、同玉、74馬、45玉、44馬、同玉、
45香、同玉、35金、55玉、65馬 まで21手詰
太刀岡甫-やっていることは成らせだが、飛2枚を投じて釣り合う図があるのが驚きである。離し打ちでやっているのも良く、銀に当てるシンプルな意味付けで成立している。心理的妙手でもあり、印象に残りやすい作。
馬屋原剛-詰工房で見せてもらったときには全く解けず、答えを見たときには度肝を抜かれた作品。 銀を成らせるのに飛2枚が釣り合うとは驚いた。 3、4筋の守備駒が重いがまあ仕方ないだろう。 古典はあまり興味がないのだが、構想のヒントになることもあるのだなと感心。
久保紀貴-ぶつけて打つ飛限定打によって銀を成らせるというのは言われてみればシンプルでなるほどなのだが、なかなかその発想には至らない。非凡なアイデアと思う。 また、個人的には飛金(成銀)銀それぞれの駒の特性がピッタリはまっている点が気に入った。 配置はやや不満あり。
<参考図>
将棋無双第51番 伊藤宗看作
75銀、同玉、64銀、86玉、26飛、同銀、75銀、同玉、
25飛、同馬、76金、74玉、65金、63玉、54金、52玉、
43金、51玉、52金、同玉、43馬、41玉、33桂、31玉、
21馬、42玉、43歩成、51玉、41桂成、同玉、32馬、51玉、
42と まで33手詰
■6月号は同人室の課題が構想作だったことも手伝って、やはりノミネート作が多かったのですが、5月号同様2作がダントツに強く、共に候補に残りました。
特に印象的だったのは、2ヶ月連続で候補入りした鈴川氏の復活振りです。これで今年の春霞賞の行方は、ますます混沌としてきました。
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