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2019年12月16日 (月)

No.211 春霞賞候補作紹介 2019年8月号

詰パラ 20198月号  春霞賞候補作紹介

■高等学校7 山路大輔氏作
◇銀成強制(局面対比)


28桂、同銀生19香、同銀成18香、同成銀28桂、同成銀
27角、同成銀17香、同成銀26金 まで13手詰

會場健大-一手一手駒を進めていくと、ひとつひとつの捨駒は単純なロジックの積み重ねであることがわかる。それが初形と終形の対比、銀だけが動く手順、というモチーフによってひとつの流れに束ねられているところに作者の顔が見えるのであって、詰将棋表現というのはこういうものだというお手本であろう。
太刀岡甫-持駒を6枚捨てて銀を成らす。その間他の駒は一切動かない。収束もたったの1手。夢のような手順で、思いついても図化するのは非常に難しいと思う。それをこの枚数でさらりとやってのけるのは流石である。
久保紀貴-水谷作が強く印象に残っていたので、28桂~19香~18香までは見えたのですが、そこから曲げてくるとは驚きました。この枚数で実現可能なのですね……。 作者の絶好調振りを示す傑作です。
馬屋原剛-なんとまあムシのいい手順をムシのいい配置で実現していること。ムシが良すぎて今まで誰も挑戦しようとすら思わなかったのだろうか。並の作家であれば、仮にこの仮想手順を思いついたとしても、実現できるわけはないと諦めてしまうだろう。理想の追求を恐れない姿勢に感服。

<参考図>
詰パラ 20146月号 水谷創氏作


78桂、同銀生69香、同銀成68香、同成銀67香、同成銀
55銀、同と、56金、同と、77銀、同と、65龍 まで15手詰

久保紀貴(発表時短評)―桂捨てから香3連打。香3連打だけでもテーマになりうるのに、それで銀が成って戻ってくるのだから文句のつけようがない。


■大学6 船江恒平氏作
◇態度打診の捨駒


75銀、同玉、73飛生、65玉、77桂、同角生、66歩、同角生、
54龍、同玉、63銀、44玉、33銀生、同玉、52銀生、53歩合、
同飛生、32玉、33歩、同角、41銀生、21玉、22歩成、同角、
13桂、同角、23飛生、22角、33桂、11玉、12歩、同玉、
13馬、同角、21飛成 まで35手詰

久保紀貴-打診を伏線で実現すること自体珍しいと思いますが、さらに舞台装置を跡形もなく消し去っているのが美しい仕上げです。 攻方の打診をテーマとする場合、その意味づけとなる構図(Aは成で逃れ、Bは生で逃れる構図)をとるのが大変だと思っているのですが、本作の構図は極めて巧妙にできていて、作家としてはそこに一番感心させられました。
馬屋原剛-まずは、成生打診を必要とさせる右上の構図に感心。ここから逆算で左下まで引っ張っていったと思うが、77桂〜66歩がまた絶品。本筋とは関係ないとはいえ、飛生や歩中合も入り、極めて完成度が高い。
會場健大-潜伏期間の長い伏線ものなのだが、個人的には駒がさばけるのが楽しい。この収束がもっていた物語を存分に引き出したと思えるからで、代償としての駒取りはここではあまり気にならない。
太刀岡甫-攻方による打診。打診に角位置が影響しないよう舞台を移動させるが、それにより打診が伏線的になっている。飛生や歩合が入る点、左辺が綺麗に捌ける点など、圧倒的な完成度である。
久保紀貴-船江作、舞台を動かしているというのはその通りで、唯一ともいえるこの構図の欠点。 本来右上だけで手順を構成できれば最高なのだが、元々の構図で角を2枚使い切っている関係上、右上に働きかける駒(打診できる駒)がない。そのため舞台を動かす必要が生じている。 とはいえそれを全ての舞台装置を消して実現したのは凄いというほかない。


■短期大学10 藤井規之氏作
◇最遠打×2回


39
34飛合、同香、同金、24桂、同金、39飛、同馬、
33飛、21玉、22歩、同玉、39飛成、21玉、11馬、同玉、
31龍、21銀、44角、12玉、21龍、同玉、22銀、32玉、
33角成 まで25手詰

馬屋原剛-この遠打を繰り返してしまうとは。繰り返そうという発想はどこから浮かんできたのか非常に気になる。仮に発想が浮かんでも具現化するのは難しいはずで、綺麗にまとめあげた手腕は確かなもの。24桂が焦点の捨て駒である点もよい。
會場健大-浦壁手筋のアレンジだが、合駒を入れて駒台の情報にも意味を持たせることで同じ位置に2度打てるという発見。構図にも無理がなく簡潔に実現している。
太刀岡甫-既存の筋も繰り返せば構想になる。言うのは簡単だが、この遠打が繰り返せるのは大発見。局面の戻し方も好手の捨駒で、構想の途中に余計な手が入らないのも良い。
久保紀貴-39香は小林敏樹作が有名ですが、それを繰り返すなんて考えたこともありませんでした。繰り返す意味(飛の品切れ)やスイッチとなる24桂捨てなど、全体として非常に精緻に作られていると思います。 小林敏樹作は今更言うまでもなく名作ですが、本作も併せて覚えておきたいですね。

<参考図 1>
近代将棋 1964年9月号 北原義治氏作


51角、同金、15角、14玉、51角成、17桂成、15金 まで7手詰

<参考図 2
詰パラ 19778月号 浦壁和彦氏作


93
、同銀、23飛、34玉、93飛成、12香、23銀 まで7手詰

<参考図 3
詰パラ 19857月号 小林敏樹氏作


39香、同馬、33飛、22玉、13飛成、同玉 まで7手詰


※「この詰2010」をお持ちの方は、ぜひ風みどり氏の論考「超短編における中合対策の研究」(同書P138~)を合わせてお読みください。

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