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2020年11月

2020年11月24日 (火)

No.230 春霞賞候補作紹介 2020年7月号

詰パラ20207月号の春霞賞候補作を紹介いたします。

■短期大学3 青木裕一氏作
2種類の合駒による馬屋原手筋


54銀生、73角合、同龍、63桂合、同龍、53桂合、23銀成、34玉、
24成銀、35玉、34成銀、同玉、23角、33玉、53龍、同龍、
45桂、22玉、34桂、31玉、32角成、同玉、22香成
まで23手詰

會場健大-異なる種類の駒による不規則?馬屋原手筋。一見魔法のような手順だが、86金を巡る攻防が理解されると今度は幾何学的な味わいに印象が変わる。
太刀岡甫-馬屋原手筋の派生。駒種を変えただけでなく、同じ意味付けで駒種の異なる中合が出てくるのが面白い。95と75に引かせなくないが83にも呼びたくないという状況を金1枚で実現しているのがきれい。
馬屋原剛-2枚目の中合も角にした方がインパクトがあると思ったのだが、同じ意味付けで異種の連続中合をするのが作者の狙い。だが、若島作(盤上のファンタジア53番)の原図の紛れの逃れ順に67桂〜57桂〜37角の三段中合があるので、新味は感じなかった。
久保紀貴-同一の目的で異種類の合駒が飛び出す連続合。連続合に複数種の合駒が混ざるのは新しいと思っていたが、馬屋原さん指摘の若島作があったか。とはいえ馬屋原手筋(と呼ばれている連合原理。なんで手筋?)でやったのは初ということで、一歩踏み込んだ作品になっているのは間違いない。

※異なる駒種の連中合は、縦型なら良く見掛けますが、横型では珍しい。本作は、それを横型の馬屋原手筋で実現したことに意義があります。
合駒に情熱を燃やす作者ならではの一局です。


<参考図①>
詰パラ2015年11月号 馬屋原剛氏作


93角、84飛合、同角成、75飛合、同馬、46玉、55銀、同玉、
54飛、同玉、44飛、63玉、64馬、62玉、73銀、71玉、
82銀生、62玉、73馬、53玉、45桂、同角、64馬、62玉、
73銀生、71玉、41飛成、61桂合、同龍、同玉、62歩、71玉、
83桂、81玉、82銀成 まで35手詰

※93に打った角は、82角成~72馬として、敵方の角の入手を目論んでいます。そこで84飛中合で82角成を防ぎますが、同角成の後、73馬~72馬でやはり角を狙われるため、更に75飛中合が必要になります。
これが従来になかった新しい中合原理で、その後「馬屋原手筋」と名付けられました。


<参考図②>
近代将棋1979年12月号 若島正氏作 (恋唄第38番)  ■塚田賞


(A)9737歩合、同馬、17玉、38馬、57歩合、同飛、37角合、
同飛、26玉、27飛、15玉、24銀打、14玉、15歩、同と、
同銀、同玉、24銀生、14玉、13銀成、同玉、22角、14玉、
15歩、同玉、33角成、同銀、16歩、同玉、17
 まで31手詰

(A)87飛なら、37桂合、同馬、17玉、38馬、77桂合、同飛、67桂合、同飛、57桂合、同飛、37角合以下、歩が入手できず不詰

※馬屋原さんのコメントにある、「若島作(盤上のファンタジア53)の原図の紛れの逃れ順」とは、上記(A)の順を指します。
この逃れ順の中合原理は、山田修司氏の塚田賞受賞作、四桂連合と同じで、9段目に高価な合駒を請求されるのを防ぐため、というもの。一方馬屋原手筋は、質駒を取られないようにするためで、同じ中合でも構造は異なりますが、どれだけ新しさを感じるかは人それぞれですね。


<参考図③>
盤上のファンタジア 第53番 若島正氏作
(上記参考図②の改作図)


97
36玉、37飛、26玉、38飛、16玉、25銀、同玉、
28飛、14玉、58馬、47桂合、同馬、同歩成、23銀、13玉、
25桂、23玉、33桂成、14玉、23飛成
 まで21手詰

※参考図②の改作図。初手87飛に対する逃れ順を含みとした飛車の最遠移動は原図と同じですが、その後の展開は全くの別物になっています。あの塚田賞作がこうなるのか、と驚くほどの変わりようですが、作者の詰棋観の移ろいを反映したものと推察します。

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2020年11月23日 (月)

No.229 第359回詰工房例会報告

1031日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、池○俊哉、馬○原剛、沖○幸、加○徹、金○清志、小○正浩、新○江○弘、芹○修、竹○健一、太○岡甫、野○村○彦、柳○明、田中徹 以上15名(以上敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。

■現在の詰工房は予約申込制で、参加者の上限は16名までですので、この人数ならほぼ定員一杯ということになります。それなりに熱気のある集まりになりました。

■この日、隣の部屋ではチェスの大会が行われていました。もしかしたら、誰か知っている人が出場していたかも知れませんね。
そう言えば、以前の詰工房では、よくチェスの対局が行われていました。高橋さんや武さん、最近お見掛けしなくなりました。
もしかしたら、自分が春霞賞を始めたせいで、落ち着いてチェスの対局が出来なくなり、足が遠のいてしまったのかも…。そう考えると、いささか複雑な心境です。

■午後3時過ぎ、春霞賞の選考会スタートです。
進行役は會○さん。ノミネートは4作。投票の結果候補に残ったのは…。

詰パラ 20207月号
短大3 青木裕一氏作

馬屋原手筋の応用作品。内容については、別頁にてご紹介します。

■詰工房の例会中止により遅れていた分の選考も先月で終わり、今回から通常モードに復帰…と思ったのも束の間、今月(11月)は都合により例会を欠席しなければならず、また1か月遅れになってしまいます。申し訳なし。

■続いては注目作の紹介。ここではそのうちの2局をご覧いただきます。

詰パラ 2020年7月号
短大5 石本仰氏


4手目73玉と逃げると、62馬、74玉、84馬、65玉、66歩、76玉、68桂、77玉、95馬以下の詰み。
初手94香、3手目89香の限定の意味は、この変化のため。初手99香では95歩合とされて、変化順の95馬ができず、詰みません。
89香に玉方も銀中合で抵抗しますが、以下2枚の馬を捌き捨てて、綺麗に収束します。
石本さんの作品は、棋形や全体の構成にも神経が行き届いていて、気品を感じます。

詰パラ 2020年7月号
大学2 山田修司氏作 「駿馬」


左下の意味ありげな配置と作者名を見れば、もう期待せずにはいられません。と金を捌いて2枚の馬を連結させた後、35香を消去すれば準備完了。続いて飛び出したのは、タダで取れる79と金に、馬を2枚とも取らせてしまうという、何とも気前の良い手順でした。歩詰打開のためとは言え、どうして成立しているのか不思議なくらい、鮮やかな手際の良さに惚れ惚れします。

■スマホ詰パラの方はまた改めて。

5時からは2次会。この日は町内のパトロールに参加のため、ここで離脱しました。

■この日の模様について知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。

■ラミちゃん、お疲れ!
ホエールズはいつまで経ってもホエールズで、誰が監督になろうと大雑把な体質は変わりません。来季も細かい野球には縁がないまま終わると、確信しています。それでもそこそこ勝てるチームになったのは、ラミちゃんの功績大です。
でもラミちゃんが辞めた途端に、ロペス・パットンが退団を発表。他の外国人選手も流出の可能性があり、番長にとっては多難な船出になりそうだ。

■新型コロナの感染は収まるどころか、陽性者数過去最高を記録し、更に勢いを増しています。
皆さまも感染にはくれぐれもご注意ください。

■なお先ほども触れましたが、今月の例会は、都合により自分は参加できません。
よって、春霞賞の選考は翌月回し。プロジェクターを使わない例会になりますので、この機を逃さず、詰将棋についてとことん語りたい、という方は、1128日(土)大井町へ来るべし!(※予約を忘れずに…)

■ではまた。

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2020年11月 4日 (水)

No.228 春霞賞候補作紹介 2020年3・6月号

詰パラ2020年3月号 春霞賞候補作紹介

■短期大学12 若島 正氏作
◇別の筋の5か所の桂中合を防ぐ最遠打


61銀成、同玉、69香71玉、84桂、76角合、同香、73銀、
93角、同歩、62角、61玉、73角成、52玉、43銀、同金、
63香成、42玉、51馬、同玉、43桂生、42玉、33金、41玉、
32金 まで25手詰

馬屋原剛-斬新な構想でとても面白いと感じた。別展開も作れそうで、構想作家の創作意欲を沸き立たせる。
久保紀貴-(一部で議論があったが)個人的には新しく、また面白いと感じた。そして何よりこれだけの構想をこれほどシンプルに仕上げた作者の技術には脱帽せざるをえない。
太刀岡甫-後の合駒を見越した限定打。それだけでも珍しいが、紛れを5ヶ所の同じ原理の中合で割り切ることにより、従来の機構にはなかった部分を抽出し、盤上で新しさを主張した(桂は4枚しかない)。香の王手を3段階にする発展がありそう。
會場健大-隣のラインの合駒に関係している最遠打。変化に備えたもので、作意ではその筋が登場しないのも不思議な印象を残していていい。

※3手目69香の最遠打が注目の一手。もし68香なら6手目76桂合とされ、以下62角~53角成には68桂成で、歩が1枚足りず詰みません。同様に、67香には75桂合、66香なら74桂合といった具合に、桂の利きが直接香に当たると逃れる仕掛け。常に新たな地平を目指す作者が掘り当てた、新機軸の中合原理です。


■デパート3 大崎壮太郎氏作
◇龍先竜香×取歩駒消去


34と、同玉、25と、33玉、47銀、38歩合、同龍、37馬
同龍、35歩合、同龍、43玉、34龍、54玉、43龍、同桂、
55歩、45玉、34角、44玉、45歩、33玉、23角成、同玉、
14と まで25手詰

馬屋原剛-歩合からの馬移動中合が渾身の受け。色々な受けがある中でこれが最善とはにわかには信じがたい。力のこもった一局。
久保紀貴-メインは龍先龍香と取歩駒(馬)消去の組み合わせだが、38歩合と36歩合が絶妙のスパイス。特に38歩合は39/38/37馬を幻影として強調している…ような気がする。 「気がする」というのは、どうも言葉を尽くしても本作の持つ面白さをうまく説明できないのだ。打歩詰ルールが生み出す不条理に慣れ親しんだ現在にあっても、まだまだ論理と感覚の間には乖離があることを教えてくれる妙作。
太刀岡甫-馬を龍で取らせるにはどうしたらいいか。2つの条件を達成するため2段階の中合が必要になる。手順を見て説明を受けても不思議に感じるくらい新しい。
會場健大-怪作。竜を残すことと馬の利きを消すことが必要、という理屈だけ取り出せばシンプルなのだが、それをこれだけ直観に反するような手順に演出したのはすばらしい。

※5手目47銀に対する受け方が難物ですが、38歩合が妙防。同香なら同馬、同龍、35歩合、同龍以下、55歩が打歩詰となって逃れ。そこで攻方も38同龍と取り、龍を消そうとしますが、「37馬移動合~35歩合」が更にその上を行く妙防。28馬を消し、龍を35へ呼ぶことで、打歩詰に持ち込むことに成功しています。
一連の受けの妙手が極めて印象的な力作です。



詰パラ2020年6月号 春霞賞候補作紹介

■同人室8 三輪勝昭氏作
◇連続打ち替え


34
23玉、33歩成、同玉、34飛43玉、33飛成、同玉、
34歩43玉、44歩、同玉、64龍、43玉、54角、34玉、
32角成、25玉、14馬、同角、34龍、同玉、24金 まで23

馬屋原剛-打ち替えている間に邪魔駒が消えていく。特に飛から歩で打ち替える手順がよく成立したものだ。打ち替えもまだまだ色々なことができると感じた。
久保紀貴-一手一手を繙けばそこにあるロジックは明確なのだが、繋げてみると何をやっているのかわからなくなる面白さ。得難い妙味と思う。
太刀岡甫-打ち替えを連続で行う作自体はないわけではないが、元の駒に戻すのは驚いた。高価な飛を使っているし、打歩も絡めていてかなり高度なことをやっている。
會場健大-邪魔駒消去ふたつのあと、34の駒を打ち換える手続きが入って独特の感触になった。

※まず初手34飛と打ってみましょう。23玉は簡単に詰むので、43玉。打歩詰の局面です。そこで33飛成~34歩と打ち換えると、再び43玉。一見、飛車を何の代償もなく捨てただけに見えますが、43桂が消えているため、34歩に23玉なら53龍以下の詰みが生じています。つまり、34飛~33飛成で43桂を消去したのは、34歩に対し43玉を強要するためでした。
今度は44歩が打てるので、同玉に64龍以下収束……と思いきや、32角成に25玉で後が続きません。しかし、この時23桂がなければ14馬以下。そこで初手に戻って34歩と打ち、23桂を取らせてから33歩成~34飛と打ち換えるのが正解となります。
派手さはなくても、見る者の知性を刺激せずにはおかない、不思議な引力を持った作品です。


■創棋会1 中村宜幹氏作
◇飛銀の3/4回転翻弄


55金、同銀45金、同飛64金、同銀65銀、同飛
53飛、同銀、63角、同飛55金 まで13

馬屋原剛-単純明快だがすごく高度なことを成し遂げている。無数のと金も作者の執念を感じ、逆に清々しい。
久保紀貴-そもそも2枚を翻弄する作品はかなり珍しいはず(パッと思いつくのは上田さんの名作くらい)。本作はさらに駒の軌跡にもこだわって作られており、作者のやってやろうという意思が感じられる。
太刀岡甫-翻弄の軌跡は最近注目のテーマの1つ。似たような位置で2枚同時に翻弄するのは非常に高度であり、文句なしに新しい。駒をたくさん置くと構想っぽく見えるのでオススメです。
會場健大-銀飛銀飛と連れていく新しい翻弄ものでおもしろい。ただ、主役の駒が目立たなくなる初形は演出としてやはり惜しい。

※作意だけ見れば単純明快ですが、銀と飛車の2枚をセットで操縦するのは、並大抵のことではないはず。初形に難はあるものの、それも含めて作者の意欲の表れと言えるでしょう。


<参考図>
詰パラ 1975年2月号 上田吉一氏作  「極光」第18番




※まさに不朽の名作。本作を始めとした不規則趣向の分野を開拓したのは、作者の大きな功績です。

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