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2020年11月 4日 (水)

No.228 春霞賞候補作紹介 2020年3・6月号

詰パラ2020年3月号 春霞賞候補作紹介

■短期大学12 若島 正氏作
◇別の筋の5か所の桂中合を防ぐ最遠打


61銀成、同玉、69香71玉、84桂、76角合、同香、73銀、
93角、同歩、62角、61玉、73角成、52玉、43銀、同金、
63香成、42玉、51馬、同玉、43桂生、42玉、33金、41玉、
32金 まで25手詰

馬屋原剛-斬新な構想でとても面白いと感じた。別展開も作れそうで、構想作家の創作意欲を沸き立たせる。
久保紀貴-(一部で議論があったが)個人的には新しく、また面白いと感じた。そして何よりこれだけの構想をこれほどシンプルに仕上げた作者の技術には脱帽せざるをえない。
太刀岡甫-後の合駒を見越した限定打。それだけでも珍しいが、紛れを5ヶ所の同じ原理の中合で割り切ることにより、従来の機構にはなかった部分を抽出し、盤上で新しさを主張した(桂は4枚しかない)。香の王手を3段階にする発展がありそう。
會場健大-隣のラインの合駒に関係している最遠打。変化に備えたもので、作意ではその筋が登場しないのも不思議な印象を残していていい。

※3手目69香の最遠打が注目の一手。もし68香なら6手目76桂合とされ、以下62角~53角成には68桂成で、歩が1枚足りず詰みません。同様に、67香には75桂合、66香なら74桂合といった具合に、桂の利きが直接香に当たると逃れる仕掛け。常に新たな地平を目指す作者が掘り当てた、新機軸の中合原理です。


■デパート3 大崎壮太郎氏作
◇龍先竜香×取歩駒消去


34と、同玉、25と、33玉、47銀、38歩合、同龍、37馬
同龍、35歩合、同龍、43玉、34龍、54玉、43龍、同桂、
55歩、45玉、34角、44玉、45歩、33玉、23角成、同玉、
14と まで25手詰

馬屋原剛-歩合からの馬移動中合が渾身の受け。色々な受けがある中でこれが最善とはにわかには信じがたい。力のこもった一局。
久保紀貴-メインは龍先龍香と取歩駒(馬)消去の組み合わせだが、38歩合と36歩合が絶妙のスパイス。特に38歩合は39/38/37馬を幻影として強調している…ような気がする。 「気がする」というのは、どうも言葉を尽くしても本作の持つ面白さをうまく説明できないのだ。打歩詰ルールが生み出す不条理に慣れ親しんだ現在にあっても、まだまだ論理と感覚の間には乖離があることを教えてくれる妙作。
太刀岡甫-馬を龍で取らせるにはどうしたらいいか。2つの条件を達成するため2段階の中合が必要になる。手順を見て説明を受けても不思議に感じるくらい新しい。
會場健大-怪作。竜を残すことと馬の利きを消すことが必要、という理屈だけ取り出せばシンプルなのだが、それをこれだけ直観に反するような手順に演出したのはすばらしい。

※5手目47銀に対する受け方が難物ですが、38歩合が妙防。同香なら同馬、同龍、35歩合、同龍以下、55歩が打歩詰となって逃れ。そこで攻方も38同龍と取り、龍を消そうとしますが、「37馬移動合~35歩合」が更にその上を行く妙防。28馬を消し、龍を35へ呼ぶことで、打歩詰に持ち込むことに成功しています。
一連の受けの妙手が極めて印象的な力作です。



詰パラ2020年6月号 春霞賞候補作紹介

■同人室8 三輪勝昭氏作
◇連続打ち替え


34
23玉、33歩成、同玉、34飛43玉、33飛成、同玉、
34歩43玉、44歩、同玉、64龍、43玉、54角、34玉、
32角成、25玉、14馬、同角、34龍、同玉、24金 まで23

馬屋原剛-打ち替えている間に邪魔駒が消えていく。特に飛から歩で打ち替える手順がよく成立したものだ。打ち替えもまだまだ色々なことができると感じた。
久保紀貴-一手一手を繙けばそこにあるロジックは明確なのだが、繋げてみると何をやっているのかわからなくなる面白さ。得難い妙味と思う。
太刀岡甫-打ち替えを連続で行う作自体はないわけではないが、元の駒に戻すのは驚いた。高価な飛を使っているし、打歩も絡めていてかなり高度なことをやっている。
會場健大-邪魔駒消去ふたつのあと、34の駒を打ち換える手続きが入って独特の感触になった。

※まず初手34飛と打ってみましょう。23玉は簡単に詰むので、43玉。打歩詰の局面です。そこで33飛成~34歩と打ち換えると、再び43玉。一見、飛車を何の代償もなく捨てただけに見えますが、43桂が消えているため、34歩に23玉なら53龍以下の詰みが生じています。つまり、34飛~33飛成で43桂を消去したのは、34歩に対し43玉を強要するためでした。
今度は44歩が打てるので、同玉に64龍以下収束……と思いきや、32角成に25玉で後が続きません。しかし、この時23桂がなければ14馬以下。そこで初手に戻って34歩と打ち、23桂を取らせてから33歩成~34飛と打ち換えるのが正解となります。
派手さはなくても、見る者の知性を刺激せずにはおかない、不思議な引力を持った作品です。


■創棋会1 中村宜幹氏作
◇飛銀の3/4回転翻弄


55金、同銀45金、同飛64金、同銀65銀、同飛
53飛、同銀、63角、同飛55金 まで13

馬屋原剛-単純明快だがすごく高度なことを成し遂げている。無数のと金も作者の執念を感じ、逆に清々しい。
久保紀貴-そもそも2枚を翻弄する作品はかなり珍しいはず(パッと思いつくのは上田さんの名作くらい)。本作はさらに駒の軌跡にもこだわって作られており、作者のやってやろうという意思が感じられる。
太刀岡甫-翻弄の軌跡は最近注目のテーマの1つ。似たような位置で2枚同時に翻弄するのは非常に高度であり、文句なしに新しい。駒をたくさん置くと構想っぽく見えるのでオススメです。
會場健大-銀飛銀飛と連れていく新しい翻弄ものでおもしろい。ただ、主役の駒が目立たなくなる初形は演出としてやはり惜しい。

※作意だけ見れば単純明快ですが、銀と飛車の2枚をセットで操縦するのは、並大抵のことではないはず。初形に難はあるものの、それも含めて作者の意欲の表れと言えるでしょう。


<参考図>
詰パラ 1975年2月号 上田吉一氏作  「極光」第18番




※まさに不朽の名作。本作を始めとした不規則趣向の分野を開拓したのは、作者の大きな功績です。

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コメント

参考図(上田作)の手順が間違っています。どうやら柿木の解答をそのまま掲載したみたいですが、2手目61玉が作意です。

投稿: 平井康雄 | 2020年11月 5日 (木) 16時27分

ご指摘ありがとうございました!
修正いたしましたので、今度は大丈夫かと…。
しかし、元の手順のひどいこと。それで「不朽の名作」と言うのだから、知らない人が見たらどう思ったことでしょう。指摘していただかなかったら…と思うとゾッとします。本当に感謝です。

投稿: 安武利太 | 2020年11月 5日 (木) 20時28分

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