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2021年5月23日 (日)

No.238 第8回春霞賞受賞作発表



2020年 春霞賞受賞作 発表!


大 賞   8月号短大10    宮原 航氏作

佳 作  10月号短大18    石本 仰氏作

佳 作 特別賞  3月号短大12 若島 正氏作

佳 作   4月号デパート2  馬屋原剛氏作

H. M.    8月号大学4     馬屋原剛氏作

H. M.    6月号デパート4 野曽原直之氏作

H. M.    3月号高校11   大崎壮太郎氏作

H. M.    6月号創棋会1   中村宜幹氏作

H. M.    12月号デパート3  馬屋原剛氏作




大 賞     宮原 航作  「跳ね玉兎」

■最後に9段目に利きを作るための4段跳ね合

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41桂成、52玉、96馬、63桂51成桂、42玉、97馬、75桂
41と、32玉、98馬、87桂生、31と右、22玉、99馬、同桂成
44角、33角合、同角成、同銀、12飛成、同玉、21角、22玉、
32と まで25手詰

會場健大-これだけ明快かつ新鮮な手順は得がたい。
井上徹也-桂の四段ハネが一本の線でつながっている。
金子清志-すごい+きれい。
久保紀貴-桂の四段跳ねを初めて構想化した作品と言えるかも。
小池正浩-桂4段跳ねを明解な論理の移動合で表現したことが素晴らしいです。
芹田修-視覚に訴える傑作。
松澤成俊-奇跡の四段跳ねにびっくり。昨年最も感心した作品のひとつ。
宮田敦史-桂の四段活用が見事。


佳 作    石本 仰作

■ブルータス手筋の応用

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53角、52玉、75角成55歩合、53飛、41玉、42歩、同玉、
55飛引成、33玉、34歩、同玉、6444桂合、同龍、同玉、
53馬、33玉、34歩、同玉、54飛、33玉、25桂、同香、
24と まで25手詰

太刀岡甫-作意と紛れの対比表現が新しい。その手段としてブルータス手筋を用いるのが高度である。
小池正浩-角を近くから打ち、成ってからブルータス手筋を構成するのがひねっていて好ましいです。
久保紀貴-幻のブルータスがまさかの実現。
井上徹也-構想に見合った構図の取り方が良い。
會場健大-まぎれで想定したバッテリーに回り道してたくみにたどり着く手順。


佳 作 特別賞  若島 正作   

■別の筋の5か所の桂中合を防ぐ最遠打

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61銀成、同玉、69香71玉、84桂、76角、同香、73銀、
93角、同歩、62角、61玉、73角成、52玉、43銀、同金、
63香成、42玉、51馬、同玉、43桂生、42玉、33金、41玉、
32金 まで25手詰

會場健大-別のラインの合駒に関係した新しい意味づけの最遠打。
青木裕一-おそらく前例がない遠打の意味付け。
馬屋原剛-香の打ち場所に呼応して桂の合駒位置が変わる仕組みが新しい。
久保紀貴-構想の純粋な新しさではピカイチと思う。完成度も流石。
竹中健一-詰ますときは69から打つのが普通だが、意味を考えるとすばらしい。
太刀岡甫-紛れに対する受け方の使い方が新しく、1回の中合で5回分の深みを出している。

(特別賞選評:馬屋原剛)
●一本目の限定打の位置に応じて、二本目の線駒に対する中合の位置が変わる作品は、かの有名な「君知るや」を嚆矢として数多く作られてきた。過去の作例では、線駒の交点に中合をして利きを干渉していた。 だが、構想作の大家である氏は一本目の線駒を直接取るという全く新しい意味づけを発明してしまった。作者の言葉にあるストロボ効果から、界隈ではストロボ合という用語が既に定着しつつある。優れた構想には自然と呼び名が定着するものだ。
さらに興味深いのが20212月デパート③相馬慎一作。ストロボ合の第2号局が早くも登場したのである。構想作家はひかれ合う、優れた構想を触媒として。


佳 作  馬屋原剛作

■局面対比(歩の後退)

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16馬、25歩合、同馬、44玉、88馬、54玉、55歩、44玉、
26馬、43玉、87馬 まで11手詰

宮田敦史-魔術のような手順で歩が下がる。
竹中健一-特別賞でも良いので記憶に残したい。
金子清志思いついても作れそうにない作。
青木裕一-持駒も変わらないところが珍しい。


Honorable Mention   馬屋原剛作(8月号)

■線駒の利きの開閉を保留するための複合合

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71飛成、72角合85銀、64玉、62龍、63桂合、53龍、73玉、
74銀、同玉、85金、73玉、62龍、64玉、76桂、同歩、
54金、同玉、53龍、45玉、56龍、44玉、53龍、45玉、
86金、75桂左、同飛、同桂、56龍、44玉、33銀生、同玉、
45桂、同角、25桂、44玉、53龍 まで37手詰

(H.M. 選評:馬屋原剛)
●利いているかつ利いていない、そんな量子力学の重ね合わせのような現象を実現する巧妙な応手に注目したい。攻方もそれに呼応して奪取する駒をスイッチする高度な駆け引きが繰り広げられる。


Honorable Mention   野曽原直之作「夕星」

■リアピースを取るための4連金合

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46桂、55金合、同飛、56金合、同飛、57金合、同飛、58金合
48銀、69玉、78馬、同玉、87馬、同玉、88と、76玉、
87と、75玉、86と、74玉、85と、63玉、75桂、52玉、
41桂成、57金、51銀成、43玉、44金、同玉、45金、同玉、
54銀、55玉、56歩、同玉、57銀、同玉、48金、56玉、
57歩、55玉、45金 まで43手詰

(H.M. 選評:馬屋原剛)
●後に開王手したときにリアピースを取るための連続合は添川氏の「魁」という前例がある。ここでは4連金合の希少性に注目したい。金を何枚も持てば余詰のリスクが跳ね上がる。そのためか4連金合を実現した作品は数えるばかりだ。4連金合の新たな意味づけとして記憶に留めておきたい。
なお、大崎氏のブログも興味深い。
https://kakikake.hateblo.jp/entry/2020/09/04/195915


Honorable Mention    大崎壮太郎作

■取歩駒を遮断しないための短打

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44、同桂、24銀、34玉、52角成、同と、35歩、同飛、
23銀生、33玉、34歩、同飛、45桂 まで13手詰

(H.M. 選評:馬屋原剛)
●短打の意味づけは数あれど、この意味づけは初ではなかろうか。構想作が飽和するにつれ誰もが新しさに気づく作品は作りにくくなっている側面はある。我々春霞賞スタッフは構想に対する解像度を上げて、わずかなしかし確実な進歩を埋もれさせないようにしたい。


Honorable Mention   中村宜幹作

■2枚翻弄 3/4回転

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55金、同銀45金、同飛64金、同銀、65銀、同飛
53飛、同銀63角、同飛、55金 まで13手詰

(H.M. 選評:馬屋原剛)
●2枚の駒をしかも交互に翻弄する作例はパッとは思い浮かばず、離れ業であることは間違いでない。だが、配置の煩雑さや1回転しなかったことによる不満はある。将来、その両方をクリアした作品が現れるかもしれない。そのとき進化の過程として本作のような作品があったことを示すのは意義のあることと捉えメンションするに至った。


Honorable Mention   馬屋原剛作(12月号)

■不利逃避のための不利合

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54金、同玉、64金、43玉、54銀、34玉、25銀、同香、
38飛、37銀合、同飛、同馬、35銀、23玉、13歩成、同玉、
44銀、46馬、14歩、23玉、33銀成、同玉、31飛、44玉、
45歩、同馬、53銀生、43玉、32飛成 まで29手詰

(H.M. 選評:馬屋原剛)
●前提として相手に選択肢を与えることは明らかに不利な行為であろう。37歩合であれば、33への経路は34しかない。一方で、37銀合であれば経路は34の他に44も増えるのである。実際34の方は打歩詰になる幻の経路なのだが、歩を取らせる損な選択肢をあえて増やしているように見える不思議さに着目して欲しい。加えてその手段が不利合駒なのだ。慣れとは恐ろしいものだが、不利合駒は一見不利だからその名前を冠している。言葉遊びになるが不利に不利を重ねているのに有利に働くというパラドキシカルな味わいを堪能して欲しい。




※ここ数年、意欲的な構想作の発表が相次いでいますが、今回も大接戦になりました。投票の結果、第1回春霞賞で佳作を受賞している宮原氏が、見事な復活を果たして大賞に輝きました。おめでとうございます!
※従来は詰パラ誌上で受賞作が発表されるまで、ネットでの公開は控えていましたが、どうしても発表まで間隔が空いてしまうことから、今回はフライングすることにしました。
※コロナ禍で大変な状況の中、最後までしっかり完走してくれたスタッフの皆さん、お疲れさまでした!
今年はどんな構想作が登場するのか、ワクワクしながら待ちたいと思います。

※おしまいに、「春霞賞って何?」という方のために、簡単にご説明をー。
・「春霞賞」は、その年の最も斬新な構想作を選び、表彰するもの。
・対象は詰パラ誌上で発表された作品に限定。
・「大賞」、「佳作」は詰工房の例会参加者の投票によって決定。
・「特別賞」と「Honorable Mention(選外佳作)」は、運営スタッフの推薦による。
・第7回から、4名の若手スタッフ(會場、馬屋原、久保、太刀岡)による運営に移行。
・賞品は賞状と名誉のみ。

※ではまた。



※最初の受賞者氏名のところで、中村宜幹氏のお名前が誤って「宣幹」になっていましたので、修正いたしました。作者に対し深くお詫び申し上げます。大変失礼いたしました。(5/25追記)


 



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