« No.240 第8回春霞賞(3) 受賞作一覧・類似指摘 | トップページ | No. 242 第366回詰工房例会報告 »

2021年6月 8日 (火)

No.241 春霞賞候補作紹介 2021年1月号

大変遅くなってしまいましたが、詰パラ20211月号の春霞賞候補作をご紹介します。
なお、2月号の候補作は「該当作なし」でした。

■入選100回記念1 馬屋原剛氏作
◇ヤケクソ中合のための限定合

202111001

94龍、84銀合13龍、同玉、83龍、73銀、同龍、63歩合、
14銀、同玉、84龍、64銀合、15銀、同玉、16香、26玉、
86龍、17玉、26龍、同玉、27金 まで21手詰

馬屋原剛-合駒制限なしで、ヤケクソ中合を出すのに苦労した。主題が終わった後のまとめが平凡も平凡なので評価してもらえるとは思ってなかった。
太刀岡甫-ヤケクソ中合は作意と変化がほぼ同一であるにもかかわらず先に駒を渡すことになるので、歩以外の駒で行うだけでもけっこう凄いと思う。本作はヤケクソ中合を目的として大きな合駒を出しており、さらに実現難度の高い構想である。
久保紀貴-新たに付加した移動合のための限定合というアイデアが、ヤケクソ中合の消極的な印象を見事に反転させている。 アイデアが演出にも寄与している点を高く評価したい。(6/10追記)
會場健大-ヤケクソ中合を目的にした新しい合駒。ただ取られるための場所に行くために移動可能な駒を選ぶのがおもしろい。(7/23追記)

※5手目83龍に対し、84の銀を73に引くのが、いわゆる「ヤケクソ中合」。どうせ取られるならせめて2手だけでも延命を、という非常手段の受けです。本作では、移動合するための銀を限定合で発生させているのが、作者の工夫。攻方が銀を入手しても歩と等価、という局面の構成が成功のカギなのですが、実際にはかなりハードルが高いはずなのに、苦労の跡が見えないのは流石です。
ただ、この「ヤケクソ中合」というネーミング、気になるのは自分だけ…? もう少しシャレた名称はないものでしょうかね。


<参考図>
詰パラ1976年4月号 佐々木聡氏作

19764

22銀、同金、42銀、32玉、22角成、43玉、83飛、73龍
同飛生、34玉、74飛生、25玉、24飛、16玉、19飛、18歩合、
同飛、17歩合、同飛、同玉、28金、16玉、17歩、15玉、
27桂、24玉、33馬、25玉、26銀、同と、37桂、同と、
26歩、14玉、15馬、23玉、33銀成 まで37手詰

※「ヤケクソ中合」の始祖と言うべき名作。本作が発表された時には、「ルールの悪用」との声すら挙がりましたが、それが今や当たり前の手筋とは、隔世の感があります。(「古今中編名作選Ⅱ」第95番所載)



|

« No.240 第8回春霞賞(3) 受賞作一覧・類似指摘 | トップページ | No. 242 第366回詰工房例会報告 »

コメント

昔、首さんに「何かいい名前ないかな」と聞かれたときに、「逃げ合い」を提案したことがありましたが、定着していなかったか。

投稿: ミニベロ | 2021年6月 9日 (水) 08時11分

なるほど、「逃げ合い」をはじめ、色々と候補を探したけれど、「ヤケクソ中合」に取って代わるまでには至らなかった、というところでしょうか。そのうち誰かがピッタリの名前を見つけてくれると期待しましょう。
それにしてもミニベロさん、お久し振りです! 何年振りでしょうか。もしや、また詰工房でお会いできる日も近いとか? 
お待ちしてますよ!

投稿: 安武利太 | 2021年6月10日 (木) 00時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« No.240 第8回春霞賞(3) 受賞作一覧・類似指摘 | トップページ | No. 242 第366回詰工房例会報告 »