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2021年9月

2021年9月30日 (木)

No.248 春霞賞候補作紹介 2021年5月号

詰パラ20215月号の春霞賞候補作をご紹介します。
なお、候補作に決定してから既に1か月以上経過しており、ご紹介の遅れを深くお詫びいたします。


■高等学校21 渡辺直史氏作      
◇局面対比<攻方26香→受方26香>

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46角成、26玉、28馬、35玉、13角、24香打合、46馬、26玉、
37馬、同玉、26銀、同香、46角成 まで13手詰

太刀岡甫-盤上から駒が消えたり出現したりする対比は増えてきたが、向きが入れ替わるためにはその両方を同一地点で行う必要があり、局面を戻す難易度がさらに上がる。以下1手で詰むのも素晴らしい。
會場健大-センスが光る作。ひっくり返る香が本当にもともと26にあった攻め方の香を渡した駒なのもユニークで、局面の微小変化ものとして純度が高い感じがする。
馬屋原剛-魔法のように香がひっくり返る。13角が何事もなかったかのように居座っているのが奥ゆかしい。初手と最終手が同じなのも統一感があってまたよい。
久保紀貴- 駒の向きが入れ替わるテーマ自体はそれなりの作例があるが、攻方→玉方は珍しい。 テーマを実現する手順自体が面白いのも本作の売りで、特に馬の動きには目を見張るものがある。

※もしも初形で26の香車が玉方だったら、46角成の1手詰。その“もしも”が、12手目の局面で実現する! 構成としては、①26香を消去、②合駒で24に香車を発生、③24香を26へ移動、の3段階から成っており、香の向き以外、盤面に一切変化がない(持駒は除く)ことも重要なポイントです。
最近よく目にするようになった局面対比のテーマは、一つのジャンルとして定着し、翻弄ものと並んで、今最もポピュラーな分野になった感があります。


<参考図>

■詰パラ2020年4月号 馬屋原剛氏作      
◇局面対比 <一歩後退>

0300-3


16馬、25歩合、同馬、44玉、88馬、54玉、55歩、44玉、
26馬、43玉、87馬 まで11手詰

※初形54歩が、詰上り図では何と55歩と一歩後退している(!)と言う、不可能を可能にした一局。
第8回春霞賞佳作受賞作です。


■デパート5 岩村凛太朗氏作  「攻野の七人」    
◇攻方七種合

202155


85、同龍、75桂53玉、63飛、同香、64銀、同香、
同と、44玉、46香、45飛合、55金43玉、45香、32玉、
23と、31玉、32歩、同銀、51飛、41角合、同香成、同銀、
3242玉、33角、同金、41飛成、同玉、33桂生、51玉、
42銀、同玉、41金、43玉、54と、34玉、44と まで39手詰

太刀岡甫-攻方7種合は珍しい狙い。唯一の前例に比べて打合が増えた点が構想上の進歩で、線駒が多く内容もボリュームアップしている。7種打合まであと1枚だが、この1枚は見た目以上に遠そうだ。
會場健大-ひとつの逆王手に対して複数の逆王手を詰め込む構成の菅野作と違って、少しずつ舞台を切り替えながら別々の場所で逆王手を出していく本作はかなりテクニカルな印象。最初だけ移動合なのが少し惜しまれる、というのは高望みしすぎか。
馬屋原剛-同テーマの菅野作『LOVE IS OVER Ⅲ』との比較となるが、菅野作は2本の線駒に対して合駒を出している一方、岩村作は4本もの線駒に対して合駒を出している点が高級に映る。さらに、岩村作は打ち合いが多いのも評価が高い。それだけに、最初の角だけは移動合なのが惜しい。
久保紀貴- 前例の存在は残念だが、それでも非常に高難度で貴重な構想を実現したことには拍手を送りたい。 前例と比べて洗練された手順も素晴らしい。

※先行作である菅野哲郎氏の「LOVE IS OVER Ⅲ」(参考図)は、七種合のうち移動合が5回で、打ち合は2回のみ。打ち合が多ければ持駒も増え、創作難度は格段に上がることから、菅野作と岩村作は同じ物差しでは測れません。いずれ全て打ち合の七種合が登場するでしょうか。


<参考図>

■詰パラ2008年2月号 菅野哲郎氏作 「LOVE IS OVER Ⅲ」

0601-20082-8-love-is-over


28玉、24玉、35金、33玉、23角成、同香、24金、同香、
25、同香、27銀43玉、44歩、52玉、51と、63玉、
83飛成、73角合、64飛、同玉、65歩、63玉、64歩、同玉、
75角、63玉、64香 まで27手詰

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2021年9月 8日 (水)

No. 247 第369回詰工房例会報告

822日(日)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:青○裕一、岩○修、馬○原剛、沖○幸、金○清志、小○正浩、芹○修、竹○健一、松○成俊、宮○敦史、田中徹 以上11名(以上敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。

■昨年の解答順位戦で満点首位の松○さん、同率4位の宮○七段、竹○さんと、解答強豪3人が揃い踏み。
詰将棋の会合というと、なぜか作る側の方ばかり集まる傾向があり、解く側メインの方でこれほど豪華な顔ぶれが揃うことは、そうそうないはずです。
自分は会場に着くと春霞賞と注目作の準備に没頭するので、余り話をする時間がないのが残念。解答者の目線で見えてくるものとかナンとか、伺ってみたいと思っています。
また、すっかり常連となった宮○七段、今ではそこにいるのが当たり前で、ついプロ棋士であることを忘れてしまいがちですが、ご多忙にも関わらず熱心に参加していただき、有難い限りです。先生にも、棋士の素顔や将棋界の裏話など、一度こっそりお聞きしてみたいものです。

■春霞賞の選考会は15時頃スタート。進行役は馬○原さん。
今回のノミネートは6作で、高レベルの作品が揃う激戦でしたが、投票の結果、次の2作が候補に残りました。

詰パラ 2021年5月号   ◇局面対比
高校21 渡辺直史氏作   <攻方26香→玉方26香>

詰パラ 2021年5月号
デパート5 岩村凛太朗氏作  ◇攻方7種合

詳しくは別稿にて。

■続いては注目作のご紹介。

詰パラ 2021年5月号
高校25 鈴川優希氏作

2021525


32角打、(イ)33玉、36香、(ロ)同と、23飛、44玉、47香、(ハ)同と、
34角成、同桂、43飛打、(ニ)35玉、24飛成、同玉、14角成、同玉、
15金まで17手詰

(イ)24玉は23飛、35玉、25角成、45玉、43飛打、44合、同飛成以下。
(ロ)44玉は34角成、同桂、43飛、54玉、44飛打、65玉、63飛成以下。
(ハ)46歩合は34角成、同玉、35金、同と、44飛、同玉、43飛成まで。
(ニ)54玉は64金、同玉、73飛成まで。

守備駒の利きに打つ香打を2度繰り返すという、作者の高い創作力を示した一局。一手ごとに奥行きのある好変化を伴い、何局分も解いたような気分になれる、超高密度の傑作短編です。

詰パラ 2021年5月号
短大21 齋藤光寿氏作

2021521


96馬、同龍、78角、46龍、96角、同飛、46香、同飛、
51飛、42玉、52飛成、31玉、43桂、同飛、32龍、同玉、
24桂、23玉、15桂、24玉、25金 まで21手詰

序の8手の大捌きが実にダイナミック。なぜこんな手順が成立するのか?
・初手96馬=龍か飛車を96に誘って質駒にする。
・4手目46龍=どうせ取られるならと移動捨合。同香と取らせ、43金以下の逃れを狙う。
・5手目96角=95飛の5段目の利きを消し、43金以下の逃れ順を防ぐ。
派手な作意だけでなく、変化に隠された攻防にも見応えがあり、奥の深い本格派中編作です。

スマホ詰パラ 2021年7月
No.16971 盤上の狼氏作

16971_202107


34
飛成、12玉、42飛成、13玉、43龍上、23銀合、同龍、同玉、
34銀、24玉、25馬、13玉、35馬、24香合、14歩、同玉、
12龍、13金合、25銀、同香、13龍、同桂、24金、15玉、
25金、同桂、16香、同玉、26馬まで29手詰

美形ながら、持駒が歩1枚のため、取っ付きにくい印象です。
3手目ダメ元で42飛成とすると、22歩合には14龍、13歩合、34馬、11玉、22龍、同玉、23龍、31玉、32歩以下ピッタリの詰み。しかし13玉と打歩に持ち込まれ、手段に窮したかに見えますが、43龍上が唯一の継続手。龍がソッポに行って指しづらい難手ですが、これに23銀合しかないことが判ると、一気に視界が開けます。その後2度の限定合を交えて細かく攻めをつないでいくと、切れの良い好感度抜群の収束と予想もしなかった詰上りが! 
最後はぜひ盤に並べて、どんな詰上りが現れたのか、ご自分の目で確かめてください。芹○さん絶賛の逸品です。

スマホ詰パラ 2021年7月
No.16995 まつをっぽいよ氏作

16995_202107


34
金、同角、5435玉、46金、同玉、56龍、同玉、
57金 まで9手詰

3手目の金の重ね打ちが、最終手で効果の判る伏線。この主眼手以外はすべて捨駒で構成するなど、9手という短手数で地味な狙いを鮮やかに表現していて、このテーマの見本にしたいような佳品です。

■この日も例会終了後は、無理をせず撤収。帰りの電車の中では、予想通り爆睡でした。

■この日の模様について知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」ともう一つ、松澤さんのブログ「あーうぃ だにぇっと」もぜひご覧ください。

■ではまた。

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