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2021年10月

2021年10月26日 (火)

No.250 春霞賞候補作紹介 2021年6月号

詰パラ20216月号の春霞賞候補作をご紹介します。
また、今回も発表が遅れましたことをお詫び申し上げます。

■創棋会3 則内誠一郎氏作    
◇不利逃避のための合駒

202163_20211026223201

76香、同桂、53馬、64歩合、同馬、同角、74飛、65玉、
64飛、75玉74飛、85玉、94角、同飛、86歩、95玉、
94飛、同玉、95歩、同玉、85飛、94玉、83飛成、95玉、
85龍 まで25手詰

會場健大-角の利きを消したいために、将来飛車の通り道になる場所に角を移動させて拾ってもらうべく落としておく64歩。不利逃避のために受け駒を移動させておく構想はおもしろい。
馬屋原剛-ありそうでなかった不利逃避の新手法。シンプルに出来ている。不利逃避にはまだまだ可能性があると感じた。
久保紀貴-後の不利逃避で取らせることができるよう角の位置を調整するための合駒という構想は素直に面白いと思った。 普通に作ると53同角の変化では65玉と逃げられて詰まなくなってしまいそうだが、74飛の利きをうまく使って切り分けているのも好印象。
太刀岡甫-不利逃避に向けて角位置を変える歩合。駒を沢山もらう構想は視覚的にも楽しい。

※玉方は、42角の86への利きを消して打歩詰に持ち込みたい。そこで4手目同角とせず、64歩合として、角を53ではなく64に持っていきます。そのうえで10手目75玉とよろければ、見事、角の消去に成功します。
不利逃避にはまだまだ魅力的な鉱脈が埋もれているようです。


<参考図>

①詰パラ2019年12月号 大崎壮太郎氏作    
◇不利逃避のための合駒

2019123

44飛引成、26玉、35龍、同玉、44角、36玉、34飛、35桂合
同飛、26玉15飛、36玉、35飛、47玉、39桂、同歩成、
38角、同と、48歩、同と、56銀、46玉、47歩、同と、
55銀 まで25手詰

※8手目の捨合によって攻方の飛車を35へ誘ったところで、26玉として15馬を取らせるのが不利逃避。攻方の「取り駒の位置を換える」ことで不利逃避を実現するもので、「取らせる駒の位置を換える」則内作と好一対をなす作品です。


②詰パラ2020年12月号 馬屋原剛氏作    
◇不利逃避のための合駒

2020123

54金、同玉、64金、43玉、54銀、34玉、25銀、同香、
38飛、37銀合、同飛、同馬、35銀、23玉、13歩成、同玉、
44銀、46馬、14歩、23玉、33銀成、同玉、31飛、44玉、
45歩、同馬、53銀生、43玉、32飛成 まで29手詰

※前の2作は、取る駒、または取らせる駒の位置を調整するための合駒でしたが、本作は、攻方が入手する合駒自体の種類を変えることによって、不利逃避に持ち込もうというもの。三者三様の面白さがあります。

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2021年10月 4日 (月)

No. 249 第370回詰工房例会報告

925日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、馬○原剛、沖○幸、加○徹、金○清志、小○正浩、近○啓介、近○郷、酒○高行、芹○修、竹○健一、渕○上悠、松○成俊、宮○敦史、柳○明、田中徹 以上17名(以上敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。

■今回はおそらく定員一杯、盛況でした。10代(と思われる)3人のおかげで、平均年齢が相当若返ったと思います。
あとから知ったのですが、このうちの2人は奨励会入会が決まったばかりだそうで、心からお祝い申し上げます。厳しい世界ですが、夢の実現のため、負けずに頑張ってください。プロになってもまた詰工房に来てもらえると嬉しいですね。

■柳○さんが新刊の詰棋書をいくつか持参されていたので、「百日紅」と「創発」の2冊を購入しました。そう言えば、最近作品集の発行増えてません? 実はじっくり中身を読む暇がなく、積ん読状態の本がたくさん…。本棚も一杯だし、弱りました。

15時を過ぎて、春霞賞の選考会を始めようとしたところで、PCの画面がプロジェクターに映らないというトラブルが発生。いよいよダメかと覚悟しかけた時、予備のUSB接続コードがあるのを思い出して差替えてみたら、これが正解で、見事にプロジェクターが復活。結局原因はHDMIケーブルの断線だったようです。
USB接続は画質が悪く、柿木で棋譜を再現するとコマ送りのようになってしまうものの、棋譜の鑑賞には何とか耐えられるレベルで、最悪の事態は免れることができました。

■選考会の進行役は會○さん(「詰将棋サロン名作選」、お疲れさまでした!)。
今回のノミネートは5作で、投票の結果、次の作品が候補に残りました。

詰パラ 2021年6月号
創棋会3 則内誠一郎氏作

「不利逃避のための合駒」 詳しくは別稿にて。

■続いては注目作ですが、今回は、参加者の皆さんの反応が大きかった作品を中心にご紹介していきます。

詰パラ 2021年6月号
A級順位戦6 天内啓介氏作

20216a6

66香、(イ)同銀、73飛成、同玉、77香、(ロ)同銀生、74金、同桂、
84角、(ハ)同玉、85金、同と、83角成、同玉、93龍 まで15手詰

(イ)55玉は37角、44玉、54銀成、33玉、93龍以下。
(ロ)同銀成は84角、64玉、54銀成、65玉、66金以下。
(ハ)64玉は54銀成、65玉、64金、76玉、94角成まで。

『守備駒の利きに打つ香打を2度繰り返すという、作者の高い創作力を示した一局。一手ごとに奥行きのある好変化を伴い、何局分も解いたような気分になれる、超高密度の傑作短編です。』
これは前々回の当ブログ(No.247)で、パラ5月号高校25鈴川優希氏作について書いたコメントですが、同じことが本作にも当てはまります。10手目(ハ)64玉の変化には「ほぉ~」「なるほど!」という声多数。パラ10月号読者サロンの作者の言葉を読むと、この変化が創作の起点だったことが分かります。
また、作者天内氏については情報が少なく、どんな人なんだろうと、皆さん興味津々の様子でした。読者サロンの言葉の中に、「年に数回、連続して夜勤が発生する仕事をしている」とあり、今のところこれが唯一の手がかりでしょうか。
作者のブログ「天内詰将棋」も一読をお勧めします。


詰パラ 2021年6月号
B級順位戦3 利波偉氏作

20216b3

59金、同桂成、38銀、同玉、56角、27玉、37馬、同玉、
47龍、28玉、29銀、同玉、17龍56飛、18龍 まで15手詰

11手目、29銀を同玉と取れば、27龍の両王手が常識というもの。ところが19玉とかわされると、26飛が良く利いていて全然ダメ。この形で17龍~18龍の収束3手は、非常に意外性があります。
皆さんの反応も「余り見たことがない」というものばかりで、初手に対する変化処理等と合わせて好評でした。


詰パラ 2021年6月号
やさしい大学院3 岩村凛太朗氏作

202163

78金、66玉、67金、55玉、56金、44玉、45金、33玉、
34金、22玉、21と、同玉、33桂、22玉、31角成、同玉、
41角成、22玉、23金、11玉、21桂成、同玉、32馬、11玉、
33馬、21玉、43馬、11玉、44馬、21玉、54馬、(イ)11玉、
55馬、21玉、33桂、31玉、32歩、42玉、41桂成、同玉、
42歩、同玉、33金、41玉、51と、同玉、73馬、62飛合、
(A)52歩、同玉、43金打、41玉、63馬、51玉、62馬、同玉、
52飛、63玉、53飛成、74玉、73龍、85玉、84龍、96玉、
95龍 まで65手詰

金で追い上げる序に続いて、斜めに並んだ歩を食べながらの馬鋸が始まります。しかし、この5枚の歩がクセ者で、取って良いのは43歩と54歩の2枚だけ。それ以上取ると、収束で逃げ道が出来てしまい、詰みません。馬鋸の目的は、歩を2枚入手することと、馬を55に置いて73金を質にすることだけ。残り3枚の歩は毒饅頭だったのです。
という異色の馬鋸に対し、①なぜ双玉なのか。②馬鋸中の無駄合。③6587の並び歩に意味のある序をつけたい、等のご意見・ご質問が次々と…。
①双玉の理由は、48手目62飛合の時、(A)42金打、61玉、83馬に72銀(角)合で、また(A)62同馬、同玉、64飛には63角合の逆王手で逃れるため。余詰防止に最も経済的なのが81王配置だったものと思われます。
②問題は馬鋸に付き物の無駄合、即ち、31手目54馬の時(イ)32歩合とする順です。攻方に必要な歩は43542枚だけで、それ以上何枚あっても余るだけ。故に、玉方は歩が尽きるまで32歩合を繰り返せば、大幅に手数が延びる…。大矢数タイプの馬鋸において、この種の合駒は一応無駄合とされていますが、最近は有効合と見做す人も多く、極力避けた方が無難です。
なお、この議論が始まると、「じゃあ古時計は?」となって泥沼にはまりますので、要注意。この時もちょっと怪しかったものの、深入りせずに済みました。
③は、6587の歩は収束には必要だが、序の金送りは並び歩がなくても成立しているので、意味を持たせるような序奏にしたい、というもの。本作に対しては望み過ぎとも思いますが、力のある作家は、こうした高いハードルを課すことによって、作品価値を高めていくものかと、得心いたしました。


詰パラ 2021年6月号
創棋会4 中村宜幹氏作  「帯か襷か」

202164_20211103213401

83飛、同玉、95桂、74玉、85金打、65玉、67香、66飛合
同香、同玉、56馬、77玉、78飛、87玉、86金引、同桂、
88飛、77玉、78歩、同桂成、同飛、87玉、88飛、77玉、
89桂、76玉、86金 まで27手詰

飛先飛香(初手83飛)と不利合駒(8手目66飛合)の組合せ。で、先に飛車を渡して後で入手するので、「回収手筋か?」とのご質問あり。自分も同じ考えだったので、Yesと答えたものの…、実はあまり自信なし。高木手筋、森田手筋、ブルータス手筋等々、手筋にも様々ありますが、その定義は明確でなく、人によって微妙に異なっていたりするので厄介です。
本作、狙いは面白いのですが、配置と収束には改善の余地がありそうです。


詰パラ 2021年6月号
デパート2 井上徹也氏作

202162

32角成、13角合、(A)24桂、11玉、13香生、同銀、33角、22桂合、
同角成、同銀上、23桂、同銀、12歩、同銀、同桂成、同玉、
23銀、11玉、33馬、21玉、43馬、11玉、33馬、21玉、
32馬、11玉、22銀成、同銀、12歩、同玉、16飛、13角合、
24桂、11玉、13飛成、同銀、33角、22桂合、同角成、同銀、
23桂、同銀、12歩、同銀、同桂成、同玉、23銀、13玉、
14銀成、12玉、23成銀、11玉、22成銀 まで53手詰

中盤のミニ馬鋸を挟んで、同様の手順が繰り返される軽趣向作。イノテツさんらしい好作と思っていたら…
某氏「3手目同香成は余詰みではないか?」
つまり、(A)で「同香成、同銀、24桂、11玉」として作意順に合流する順が成立していました。
余詰か手順前後か、人によって見解が分かれそうなケースで、いずれにしても、結果発表ではもう少し丁寧に解説した方が良かったように思います。
詳しくは松澤さんのブログ「あーうぃだにぇっと」をご覧ください。


詰パラ 2021年6月号
デパート5 伊藤正氏作   「有明の月」

202165_

65と、同玉、56と上、64玉、75と上、63玉、55桂、同歩、
64歩、同と、同と、同玉、55と右、73玉、74と、同玉、
65と上、73玉、64と右、82玉、92歩成、同銀、83金、91玉、
92金、同玉、83歩成、同玉、74と上、93玉、84銀、同と、
同と上、92玉、83と右、91玉、81金、同玉、71歩成、同銀、
72銀成、同銀、同と、同玉、73と左、61玉、62歩、同金、
同と、同玉、63銀、51玉、41歩成、同玉、52銀生、同玉、
53金、41玉、42歩、同と、同金、同玉、53と左、32玉、
43と寄、22玉、33と左上、同桂、14桂、12玉、22金、同成香、
同桂成、同玉、21桂成、同玉、22歩、同玉、33と寄、21玉、
23香、同銀、13桂、11玉、12歩、同銀、22と、同玉、
32香成、同歩、同香成、11玉、21桂成、同銀、同成香、同玉、
32銀、11玉、12歩、同玉、23と、11玉、21銀成、同玉、
32香成、11玉、22成香まで107手詰

        【詰上り図】

202165__

序のと金斜め追い、中盤の銀不成、そして、3筋の香3枚が動き出すクライマックスと、見応え充分の小駒煙。流石は伊藤さんと、皆さんも感心しきりでした。最近では連載「詰将棋の眺め方」でも話題の作者、さらなる活躍に期待です


スマホ詰パラ 2021年8月
No.17075   まつをっぽいよ氏作

17075_202108

45馬、14玉、26桂、24玉、34桂、14玉、23飛成、同玉、
22桂成、14玉、15歩、24玉、35角、同龍、23馬 まで15手詰

2手目14玉に対し、26桂~34桂として、盤上34に桂を発生させます。そうして23への馬の利きがなくなってから、23飛成と飛び込むのが妙手順。この後22桂成、14玉となれば、攻方28飛を22成桂に置き換えた形となり、打歩詰の打開に成功します。狙いをしっかりと図化する創作力に対し、「侮れない」との声多し。


スマホ詰パラ 2021年8月
No.17156  ぬ@y氏作

17156_y202108

31銀、12玉、24桂、13玉、22銀打、24玉、51馬、42角合
同馬、35玉、53角、44桂合、同角成、同龍、47桂、同龍、
36歩、同龍、53馬、24玉、33銀生、13玉、22銀引生、12玉、
13銀成、同玉、31馬、12玉、22馬 まで29手詰

持駒を全て打ち据えた後の、51馬に対する応手が本作のハイライト。ここで普通に35玉なら、62馬、53角合、36歩、24玉、51馬となって、42に何を合駒しても取って1手詰です。ところが先に42角合としておけば、同馬、35玉、53角(以遠打)に44桂合となり、同角成を同龍と取ることが出来て、手が延びます。即ち、玉方にとってより都合の良い位置に桂合をするための角中合だったという訳です。
序で打った2枚の銀が収束でキレイに捌けるなど、全体の構成も申し分なく、皆さんの反応も「意外にイケる」「うまく出来てる」と好評でした。それにしてもこのペンネーム、何と読めば良いのでしょうか?

■プロジェクターのアクシデント等色々あって、注目作の紹介が終わったのが16:50頃。急いで機材を片付け、退室しました。
この日も自分はそのまま帰宅。帰りの電車は途中で大抵座れるので、そこからはほぼ爆睡しています。でもって、気持ちいいんですよねぇ、これが(笑)。

■この日の模様について知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ「詰将棋の欠片」と、松澤さんのブログ「あーうぃだにぇっと」もぜひご覧ください。

■パラ10月号のたま研作品展で、三輪勝昭氏と筆者の合作(筆名「三田九路寿」)が採用されました。昔々、三輪さんと文通を始めた最初の頃、三輪さんの誕生日祝いに贈ったのが創作の始まりでしたが、紆余曲折を経て(=余詰修正を繰り返し)、発表図には当時の面影はほとんど残っていません。(メールによる)文通を再開した数年前に原図を見せたら、素晴らしい逆算を加えてもらい、ようやく発表図にたどり着きました。
自分の手元にある合作の在庫はこれが最後で、もしかしたら「三田九路寿」名義での最後の作品になるかも知れません。作品展の5作中、1・2を争う易しさ(これはホント)ですので、記念に解いていただければ幸いです。

■ではまた。

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