No.256 春霞賞候補作紹介 2021年9月号
詰パラ2021年9月号の春霞賞候補作を紹介します。
■高等学校12 原田 豪氏作 「橋」
◇新し気なグループ合駒
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87馬、65飛合、32銀、34玉、78馬、67飛打合、23銀生、25玉、
37桂、同飛成、34馬、同桂、14銀生 まで13手詰
馬屋原剛-何が何でも37に利きを残したいという複合合駒。意味づけはシンプルだが、構想が伝わりやすい造りとなっており好感が持てる。
太刀岡甫-飛を取られても飛の利きが残るようにする複合合駒。1枚目を中合で行った点と構想を簡潔にまとめている点が素晴らしい。
久保紀貴-37に利きを作る飛合と、その利きを失わないための飛合。これまでになかったのが不思議なくらいのシンプルさに拍手を送りたい。
會場健大-合駒が移動した先でどのマスに効いているか、という作に見えたので、最初新しさがわからなかったが、グループ合駒の新しい表現と言われてなるほどと思った。
※2手目、65に飛車の中合。成桂にヒモを付けて76飛合ならまだ分かるが、なぜ65なのか。そして、なぜ飛車なのか。さらに6手目、今度は67に飛車を打つ。この2つの飛合の目的はただ一つ、37桂打への備えにありました。67飛打合を同馬と取られても、同飛と取り返せば、37への飛車の利きは残るという訳です。
構想としての目新しさに加え、結局飛車は1枚も取らずに詰ませる構成も、なかなか洒落ています。また1人、楽しみな作者が現れました
■デパート5 中村宜幹氏作 「国士無双」
◇13種合
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19香、18馬、同金、16玉、28金、17成銀、同金、15玉、
27金、16角、同金、14玉、26金、15銀、同金、13玉、
25金、14成桂、同金、12玉、24金、13桂、同金、21玉、
12金、32玉、21銀、42玉、97角、86成香、同角、75香
同角、64飛、同角、53と、54桂、52玉、61銀、63玉
81角、72歩、同角成、74玉、75飛、84玉、76桂、95玉、
97香、86玉、87歩、77玉、55角、66金、84桂、67玉、
78と、57玉、59香、58龍、同香、47玉、48飛 まで63手詰
馬屋原剛-「夢の詰将棋」の実現に、まずは拍手を送りたい。 縦と斜めのラインで一気に合駒を出すところが実にエレガント。 構想作というより条件作のような気がするが、作品自体はとても素晴らしい。
太刀岡甫-13種移動合。提唱から長い年月を経ており、完成したこと自体素晴らしい。将棋盤の使い方が効率的で、短い収束も美しい。本作は条件作だが、これを構想に含めるかどうかを議論するには構想作の定義を整備する必要がある。現状、疑わしきは構想作としたい。
久保紀貴-夢の詰将棋。スマートな実現方法は、えげつない手順をまるでいともたやすく行われているかのように見せている。無論傑作で、某賞の有力候補であろう。 ただ、構想作にはあたらないと思うため、春霞賞の土俵で評価することには疑問が残る
(※構想作は、 目に見えるもの、すなわち表面上の手順や初形/終形 ではなく、 手順の裏側にある意味 に主張があるものを言うのだと思っています。)
會場健大-圧倒的な作でもあるし、この手があったか、という目からうろこの表現でもある。ほとんど2つのラインでこれだけの移動合を出しているのはエレガント。
※久保さんのご意見は全くその通りで、構想作は手順本位であるべきです。
春霞賞においては、これまで構想作の定義を明確にせず、詰工房の出席者にその判断を委ねてきました。これを機に、構想作とは何か、一度きちんと議論するべきかも知れません。
「国士無双」に関しては、自分は頭24手の「連続移動合ユニット」の発見を高く評価します。4手に1回、1筋だけで6度の移動合の実現なくして、13種合は完成しませんでした。本作は、この構造体の発見により、春霞賞の対象となり得ると考えます。
<参考図>
■詰パラ1981年12月号 深井一伸氏作 「七対子」
◇看寿賞受賞
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18馬、54歩合、71と、同玉、73飛成、72飛合、61香成、同玉、
72龍、同玉、52飛、73玉、62飛成、74玉、29馬、85玉、
65龍、75銀合、95と、同玉、75龍、85香合、84銀、96玉、
87銀、同玉、85龍、86香合、88香、同金、同金、同玉
86龍、79玉、78金、同玉、56馬、69玉、89龍、79金合、
59金、同玉、79龍、69金合、49金、同玉、69龍、59銀合
39金、同玉、59龍、49角合、29馬、同玉、49龍、39飛合、
38銀、28玉、46角、37桂合、同角、17玉、19香、18角合、
29桂、同飛成、18香、同龍、39角、28歩合、同角上、同龍、
同角、26玉、22飛、15玉、37角、14玉、15歩、13玉
46角、35桂合、同角、同歩、25桂、同桂、43龍、同桂
14銀 まで89手詰
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