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2025年1月31日 (金)

No.280 第410回詰工房例会報告

118日(土)、詰工房の例会に参加してきました。

この日は元々別の予定があって不参加の予定でしたが、角さん逝去の悲報に接し、それに伴いたま研も中止になってしまったことから方針変更。予定をやり繰りして参加を決断しました。
3時少し前に会場に入ると、予想を上回る出席者の数にまずビックリ。レジメが足りなくなるかも、と心配しましたが、幸い全員に配布できてひと安心しました。
今回は、宮城の市○さん、岐阜の原○津夫さん、鳥取の上○さん、兵庫の藤○さんなど、遠方からの参加者が多かったようです。遠路お疲れさまでした。

この日はまず利○さんからの告知が2件。
一つ目は、たま研主催の「角さんを偲ぶ会」を89日(土)に行うというもの。もう一つは、磯○さんの発案で、伊勢原市の上行寺にある大橋本家の墓所にお参りする予定とのことで、詳しくはいずれも利波さんのブログでご確認ください。
アドレスはこちら➞「将棋雑記

角さんを偲ぶ会には参加の一択。ただ今後のたま研の行方が気がかりです。


■第12回春霞賞候補作の選考

今回のノミネートは4作品。プレゼン担当には、最近スタッフに加わった藤○さんが初登場。作品のツボを押さえた解説は的確で分かりやすく、流石の一言でした。
投票の結果、中学校の岸本作が候補作に決定です。

・中学校20 岸本裕真氏作   同一地点でのシフマン2



■「今月の注目作」より

スマホ詰パラ 2024年12月
シナトラ氏作 No.23032  「つづら折り」

20241223032

66龍、同玉、77銀、55玉、66銀、46玉、57銀、35玉、
46銀、26玉、37銀、15玉、26銀、16玉、17銀、15玉、
16飛、24玉、23と右、35玉、26銀、46玉、37銀、55玉、
46銀、66玉、57銀、75玉、66銀、86玉、77銀、95玉、
86銀、96玉、97銀、95玉、96飛、84玉、83と左、75玉、
86銀、66玉、77銀、55玉、66銀、46玉、57銀、35玉、
46銀、26玉、37銀、15玉、26銀、16玉、17銀、15玉、
16飛 まで57手詰

★銀ノコによる横追い1往復半の趣向作。
1筋と9筋での折り返しの機構が秀逸。余分な駒を置くことなく、簡潔かつスムーズに、1筋から9筋まで最大幅の飛車の往復を実現しているのは、実に鮮やかなお手並みです。
趣向自体には菅野哲郎氏作等の先例がありますが、本作は総合的に見てこの趣向の決定版と言っても過言ではないと思います。


詰将棋メーカー 2024年12月8日
coughing氏作                ■歩合回避のための歩取らず

Coughing2024128

73金、64玉、66香、同桂、74飛、65玉、47角、56角合、
同角、同香75飛、64玉、46角、55角合、同角、同香
74飛、65玉、43角、54角合、同角成、同歩75飛、64玉、
63金、同玉、72飛成、同玉、73飛、61玉、72角、52玉、
63角成、42玉、53馬、41玉、71飛成(途中図)、51桂合
42歩、31玉、51龍、22玉、21龍、13玉、25桂、14玉、
12龍、25玉、23龍、24飛合、37桂、15玉、26馬、同飛、
同龍、同玉、23飛、37玉、28飛成、47玉、48
 まで61手詰

★味の良い序奏の後、7手目47角と打って合駒を聞きます。桂合なら、同角、同香、75飛、64玉、63金、同玉、72飛成、同玉、64桂以下早いので、56角合が最善。同角、同香と進むと、玉方55香が一歩前進しました。以下玉の位置を調整しながら角打、角合を繰り返し、5筋の香車と歩を一歩ずつ前に進めておきます。
この事前工作の後、飛車交換から飛角のコンビで玉を追っていき、37手目71飛成とした局面(途中図)にご注目ください。

          【途中図】

Coughing2024128_20250131003701

ここで51歩合が打てれば不詰ですが、54に歩がいるため歩合ができません。角打角合を繰り返して歩を54に釣り上げておいた理由がこれで、二歩禁を利用して歩合を拒否し、桂合を強要するためだったのです。
ただ、角打角合の繰り返し手順は手なりで進めてしまうところで、気が付いたら54歩型になっていた、という点は本作の弱点でもありますが、角打角合のリピート趣向の意味付けに、歩合回避の取らず手筋を組み合わせた発想は非凡です。
早く次の作品が見たいと思わせてくれる、詰将棋メーカーで今最も注目すべき作家です。



■角さんは今月(2025年1月)の詰パラで入選98回と、同人入りを目前にしていました。
調べてみると、直近10年間の発表作は50局近くにのぼり、かなりのペースで入選を重ねていたことが分かります。おそらく夕刊フジの詰将棋欄を担当されたことが、作品の量産につながったのでしょう。
そこで、この10年ほどの入選作の中から10局を選んで紹介しようと思ったのですが、10局の予定が18局まで増え、「角建逸特集 Last18」として紹介することにしました。
その中から1局。


詰パラ 2022年2月号
角 建逸氏作 

202226

62龍、42歩合、23歩成、同玉、34銀、22玉、23銀成、同玉、
45馬、13玉、53龍、43香合、14金、同玉(途中図)、
44、同香、23角、13玉、12角成、14玉、23馬引、25玉、
34馬引、14玉、36馬、13玉、35馬上、22玉、44馬上、13玉、
35馬左、22玉、24香、11玉、44馬上、22歩合、同馬、同金、
12歩、同金、同馬、同玉、23金、11玉、22
 まで45手詰

★初手は絶対に指したくない62龍が正解。合駒の位置(324252)と駒種の組み合わせだけで17通りもあり、私ならここで間違いなく脱落してます。
2手目42歩合と決まれば、23歩成以下手が進み、14手目14同玉で途中図。

           【途中図】

202226_20250131003701

★次の一手は衝撃の44龍! ただでさえ戦力が心許ないというのに、さらに龍まで捨てるとは何事か!
同香と取られると、攻方の戦力はほぼ45馬と持ち駒の角のみ。これで詰みがあるとは到底考えられませんが、香車を44に呼んで質にすることで、細い攻めが見事につながり、終局に至ります。
ところで香車を44に呼ぶのは、作意の上では13手後44馬上として香を入手するためですが、龍捨ての後、23角に25玉の変化で、34角成、26玉に、44馬寄として香車を取る必要があるので、厳密には伏線とは呼べません。が、そんなことに関係なく、初手の難手62龍、印象的な14金~44龍の攻め筋、収束を引き締める24香の限定打と、見所満載の本作は、角さんの晩年を代表する一局と言ってよいでしょう。
角建逸の名手44龍は、永く私たちの記憶に残るに違いありません。



■ある時角さんと話しをしていて、私がビートルズのファンだと言うと、渡されたのはライブハウスのチケット。角さんはビートルズのコピーバンドで主にボーカルとして長年活動されているということを、その時初めて知りました。
そして出掛けたのは確か西荻窪(?)だったか。小さなライブハウスでしたが、客席との距離が近いだけに迫力は満点。
このバンドは将棋連盟時代の同僚と結成したそうで、キャリアも長く、息の合った演奏は想像以上。角さんのボーカルは力強く、聴きごたえがあって、充実したライブ体験をさせてもらいました。
ライブで演奏された曲は、初期のロックンロールナンバーがほとんどで、これはバンドで演奏するなら当然の選択でしょう。実をいうと、私はほぼ「Sgt. pepper’s」以降の曲しか聞かない人間なのですが、それでもビートルズはビートルズ。至福の時間でした。

正直なところ、もうすっかり記憶が曖昧になっていて、いつ、何という店で、どんな曲を演奏したのか、バンド名は何だったかなど、正確には何一つ思い出せません。それでも角さんについて一番印象に残っているのは何かと聞かれれば、この時のライブの様子なのです。

角さん、天国でもきっとライブやってるんだろうなぁ…。



■ではまた。本年もどうぞよろしく。

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